例会は年10回(うち吟行は1回)


平成17年10月16日吟行

 四万はやさしい湯の町である。山々に囲まれた四万川の渓流沿いに古い旅館が立ち並ぶ群馬県北部の小さな温泉街。太宰治ら多くの文人墨客も訪れた。10月16日朝、直行バスで東京を発った俳句仲間14名(女性5名)が老舗旅館「たむら」に着いたのは昼頃。豪壮な入母屋造りの茅葺屋根の玄関が私達を迎えてくれた。どの店の軒先にも「雨やどりどうぞ」「トイレ貸します」と書かれた木札が下げられている人情味溢れる街である。また、先頃NHKで放映されたテレビドラマ「ファイト」のロケ地にもなった。
早速吟行にゆく。時々晴れ間ものぞく爽やかな空気を吸って四万川ダムまで小一時間歩いた。漸く色づき始めた山々に囲まれて、奥四万湖はコバルトブルーを溶かした宝石のように美しく神秘的であった。次の日向見薬師堂は街はずれの木立の中に佇ち、慶長3年建立の唐風様式は、小さいが古色蒼然として、国の重要文化財の名に恥じない風格を備えていた。
 宿に戻って投句。5時から選句と披講。いつも「季重ね」に厳しい太田千雪(蔵之助)さんから今回
はお褒めの選評を頂いた。その後宴会に移り、酒を酌み交わしながら宿自慢の料理「入母屋づくし」に舌鼓みを打ち、館内11種類の湯めぐりなどしながら旅の疲れを癒した。
 翌17日は名物新そばを食べたりして温泉街を散策。元禄7年創業の日本最古の湯宿で、県の重要文化財「積善館本館」などを見物しながら、ゆっくり時を過ごし、午後秋深い四万温泉郷を後にした。   (桜庭 明) 
  本吟行句会高得点(3点以上)句    
     山峡の瀬音滾りて秋気澄む     神田 尚計
     茅ぶきの旅籠の屋根や萩の花   河村 洋子
     櫨紅葉ひっそり建てる薬師堂    桜庭  明
     サワサワと稲架吹き渡る風の音   川島 知子
     蒼き淵瀬の鳴る音や秋黴雨     大川 洋子(浩仙)
     秋さびし茅葺屋根の籠堂       安宅 武一


平成17年9月4日(日)第67回例会 中央公民館第5集会学習室
   兼題 「とんぼ」と当季自由句  席題 「台風」
     高得点(3点以上)句
       湧き水の里に風立つ今朝の秋       三田 三(畔巣)
       赤とんぼ群れ飛ぶ里や登り窯       桜庭 明
       新涼や神話の里におろち舞う       大久保泰司
       八月や自分史語る傘寿の師        河村 洋子
       ひぐらしや古刹の森にしみとをる     松田 博雄
       台風の外れ安堵の床につく        太田蔵之助(千雪)
       閉ざされし古刹の御堂夕とんぼ      比護喜一郎
       台風一過天突き抜ける青さかな      大川 洋子(浩仙)



平成17年7月17日(日)第66回例会 中央公民館第5集会学習室
   兼題 「日傘」と当季自由句  席題 「アイスクリーム・ソフトクリーム」 
     高得点(3点以上)句
      道問ひて道づれとなる夏帽子        太田蔵之助(千雪)
      アイスクリーム未練ひきずる負け試合   杉本 達夫
      パラソルを少し傾け遠会釈         河村 洋子
      臥す妻にレシピを聞きて豆の飯      安宅 武一
      閉じてさしさしては閉じる初日傘      川島 知子
      ニコライ堂下る坂道白日傘         橘  優治
      ソフトクリーム舐めつつ無沙汰詫び合へり 三田 三(畔巣)



平成17年5月22日(日)第65回例会 中央公民館第5集会学習室    
  兼題 「子蟷螂」と当季自由句 席題 「ビール」    当日の高得点(3点以上)句       
      子を抱く羅漢もありて若楓      河村 洋子       
      ビール酌む膝に弁当ひとり旅    大久保泰司
      湯上りのビール無口な友と酌む   神田 尚計       
      子蟷螂はかなき斧をふりあげる   松田 博雄       
      蒼天を白雲一片夏つばめ      神田 尚計       
      万緑や串まで焦げて五平餅     太田蔵之助(千雪)
      落武者の拓きし湯宿菖蒲咲く    三田 三(畔巣)



平成17年4月30日(土)第64回句会 早稲田界隈吟行―大隈会館「楠亭」        
      樫若葉したたるばかり水稲荷     三田 三(畔巣)
      裏通り古書店の香や四月尽      神田 尚計
      水稲荷桜蕊(しべ)寄せ手水汲む   安宅 武一
      春愁や街角(かど)の帽子屋古本屋  比護喜一郎
      法書肆の変わらぬ店主春帽子     馬場 清彦
      春昼や吾が青春(はる)の跡古ベンチ 比護喜一郎
      キャンパスの乙女かがやき夏来たる  大久保泰司
      緑立つ甘泉園の池静か         本間 信一



平成17年 3月20日(日) 第63回例会
    兼題 「山笑ふ」と当季自由句 席題 「水温む」
      掌に乗せて切る絹豆腐水温む   神田 尚計
      青墨の淡きにじみや春闌(た)ける  
      泥んこの吾子の手足や水温む   川島 知子
      バス停へ急ぎゆく人春の服     坂本信太郎
      濡縁に仔猫の欠伸山笑ふ      比護喜一郎
      浜で買う若布たっぷり手秤りに   太田蔵之助(千雪)
      馬遊ぶ牧場を抱いて山笑ふ     神田 尚計
      響きたる青梅太鼓や山笑ふ     松田 博雄   



平成17年2月20日(日) 第62回例会 中央公民館第3集会学習室     
    兼題 「土筆」と当季自由句  席題 「恋猫(猫の恋)」
      消え残る夜学のあかり猫の恋     杉本 達夫
      食べてけと海女がすすめる若布汁  太田 蔵之助(千雪)
      土筆摘む母を離れて赤い靴                
      屈みこみ摘まずに愛でし土筆かな  三田 三(畔巣)


   創部11年目を迎えた当会は、本年より年10回の句会を持つこととなった(従来は年6〜8回)。今年、既に4回の句会を開催し、先の4回目(通算64回)は早稲田大学界隈吟行と趣向した。以下は前4回の高得点句(3点句以上)。
平成17年1月29日(土)第1回以降例会 中央公民館第5集会学習室    
    兼題 「家禽」と当季自由句 席題 「水仙」       
      図書館にまどろむ人や日脚伸ぶ   三田 三(畔巣)
      水仙や伊豆七島の見えかくれ     太田蔵之助(千雪)
      小刻みに鳩の小頚や春隣       桜庭 明
      つかの間の童ごころや雪まろげ    杉本 達夫
      おづおづと狭庭に漁る寒雀       比護喜一郎



平成16年12月19日(日)    例会(第60回句会)と忘年会

市内料亭「浜波」で催された。料亭における句会というと、有名文化人の集いのようだが、わが稲門会俳句部の橘部会長以下、新人1名を含む16名の集まりである。兼題「寒椿」と自由句を一句ずつ各自が持参し、当日その場で部会長が出題した席題「餅」の1句と併せて、出席会員が選句を行う。この日の秀作(3点句以上)を披露しよう。
    年経(ふ)れど去年(こぞ)の色香や寒椿  比護喜一郎
    初霜や貨車から覗く牛の貌        太田蔵之助(千雪)
    若衆の餅つきあげてかざす空        橘  正治(雅契)
    端正に母は座したり鏡餅          桜庭  明
    碧眼の僧佇(た)つ谷戸の寒椿       神田 尚計
    歳晩や見習い大工の束ね髪       三田  三(畔巣)

ついでに当日の新人会員である私の駄句(2点句)もご笑覧に供したい。
 逝きし母偲びて三歳寒椿    
部会長以下の句ごとの適評と、各自の感想発言で、会は賑やかな雰囲気となり、そのまま忘年会に移った。平成16年の想い出をこめて和気藹々と歓談し、楽しい夕べはたちまし過ぎていった。新人の私は本句会の前数日間、朝目が覚めても、外を歩いていても、作句とその修正が絶えずふっと頭に浮かんだ。
 海外の某詩人の言葉、「人は肉体年齢でなく、興味、関心、感受性、感動等人の特性を失わない限り、老年はなく、青年でいられる」は、あながちオーバーな表現ではないのではなかろうか。(市川 英雄記)


平成16年10月31日(日) 第 59回句会は箱根吟行  女性4名男性8名の参加 

    どよめきや車窓に富士の雪化粧      橘 正治(雅契)
    車窓より新雪の富士雨あがる        三田 三(畔巣)

箱根湯元で登山電車に乗り換え、強羅でケーブルカーに乗り継ぐ
    ケーブルカー登り詰めれば薄紅葉    大久保 泰司
    ケーブルカー山縫うほどに秋深し     比護 喜一郎

強羅公園上駅で下車、二駅をまたぐほど大きな公園を散策。斉藤茂吉の碑があった。
    おのづから寂しくもあるか ゆうぐれて蕾は大きく渓に沈みぬ

と刻まれている。園内はバラ、野あざみ、つわ蕗、十月桜、ススキに紅葉と色とりどりだった。
    いっせいに染まりはせじと片紅葉       川島 知子
足は近くの箱根美術館へとのびる。手入れの行き届いた美しい苔庭、群竹。ひときわ艶やかなうす桃色の紅葉の樹に見とれた。
    揺れ竹を透かして紅葉静まれり    
   川島 知子
    古陶磁の並ぶ館の薄紅葉          河村 洋子
小雨のばらつく中、落ち葉を踏みしめながら、宿に向かう。
    しぐるるや箱根の山もけぶり立ち       大久保 泰司
翌日は芦ノ湖で海賊船乗ったり、箱根関所を見学したりして帰路についた。頭を使い、足を使い、口もよくつかった。(おしゃべりで)楽しい箱根一泊の旅であった。 (川島 知子)
 *高得点句(3点句以上)




平成16年9月5日(日) 第58回句会 

  兼題:「葡萄」、「当季雑詠」各1句  席題:「秋澄む/秋麗」 1句
 高得点句(3点句以上)
    新涼や平家ゆかりの能舞台          大久保泰司
    秋麗(あきうらら)木馬揺れてる番所跡     安宅  武一
    色も香もワイングラスに満ち充ちて      坂本信太郎
    葡萄熟れ白き雲曳く国境           太田 蔵之助(千雪)
    秋澄むやゆっくり廻る観覧車         神田 尚計
    いよよ濃し白磁の皿の黒葡萄         神田 尚計
    新涼に酸味の利いたすめしかな       大川 洋子
    赤とんぼ敗戦投手立ちつくす         杉本 達夫
    澄む空に老いた親父の独り言        大久保泰司

    



平成16年7月4日(日) 第57回句会 
  兼題 「炎昼」、 「当季雑詠」 各一句   席題 「紫蘇」 一句
 高得点句(3点句以上)
    青紫蘇のひだより落ちし虫躯     比護 喜一郎
    浴衣糊いつもききすぎ母のくせ    馬場 清彦
    はぐぐみし青紫蘇匂う夕餉かな    太田 蔵之助(千雪)

    炎昼や木陰伝いのまわり道      杉本 達夫
    炎昼や都電軋みて千登世橋     比護 喜一郎




平成16年5月20日(日) 第56回句会 
  兼題 「蓮」、 「当季雑詠」 各一句 席題 「簾」 一句
 高得点句(3点句以上)
    大の字になりて風呼ぶ青簾      橘 優治
    故郷の縁側に座り青簾        三田 三 (畔巣)
    不忍の浮葉うねらせ日照雨過ぐ   神田 尚計

    漆黒の唐墨の香や夏立ちぬ      神田 尚計
    樟脳の匂い懐かし夏衣        比護 喜一郎
    窯あけの朝の茶柱風青し
       三田 三 (畔巣)



平成16年4月18日(日) 第55回句会 石神井公園吟行
 寒くなく暑くなく、陽光溢れ若葉が薫る風爽やか。絶好の日和に恵まれ4月18日、16名の参加者を得て練馬区谷原の長命寺と石神井公園を吟行した。長命寺は別名東高野とも呼ばれる真言宗豊山派の古刹。数多くの石灯篭、石仏が並び八画朱塗りの観音堂も建つ境内には枝を大きく広げた八重桜がゆさゆさと咲き誇っていた。石神井公園には石神井池と三宝寺池が並んでいるが句材は三宝寺池のほうが豊かである。嘗ては石神井川の水源として武蔵野の田畑を潤してきた豊富な湧水こそ痩せてしまったが、葦や睡蓮、河骨、杜若などの沼沢植物を縫って水鳥が泳ぎ、亀が甲羅を干している。若葉が美しい橡、欅、こならなどの林には小鳥の囀り、池の畔には鎌倉、室町の頃に築城され、太田道灌に滅ぼされた石神井城跡があり、対岸には落城の際この池に入水したと伝えられる城主豊島氏とその次女を悼んだ小さな塚もひっそりと建っていた。各自句帳を片手に木道で整備された池を巡りながら句をひねり、推敲を重ねた吟行句三句を携えて午後一時に会場である石神井公園駅近くの石神井庁舎集会室に集合、四時半まで春の吟行句会を楽しんで散会した。 (三田 三 記)
 高得点句(4点句以上)
    ひっそりと樹下に姫塚母子草      三田  三 (畔巣)
    人佇てば人を映して春の水       太田蔵之助(千雪)
    八重桜小寺の小さき仁王門      河村 洋子
    春昼や池の茶店の酒一合       神田 尚計
    しだれ柳模型汽船くぐりゆく       橘  正治(雅喫)
    照姫の入りし水辺に著莪の花     太田蔵之助 (千雪)



平成16年3月21日(日) 第54回開催 
    兼題 「菜の花」 「当季雑詠」 各一句 席題 「彼岸」 一句 (4点句以上)

   
   欠伸して欠伸うつして春うらら        馬場 清彦
   墨磨って墨の香に居る彼岸かな       三田 三(畔 巣)
   白木蓮に三面鏡を明け放つ          棚野 愛子
   群青の海を真下に藪椿            三田 三(畔 巣)
   菜の花やローカル線の一人旅       河村 洋子

   



平成16年2月11日(日) 第53回開催 
    兼題 「春燈」 「当季雑詠」 各一句 席題 「下萌」 一句 (3点句以上)

   
   下萌や一筋深き轍あと          三田 三(畔 巣)
   残業の遅き子を待つ春燈り        川島 知子
   下萌えに気づく狭庭の息吹かな     大久保 泰司
   春燈や路地の酒房の夢二の絵      神田 尚計
   ランドセル足音軽き春の朝        坂本 信太郎
   春燈や馴じみつつある臨書筆       河村 洋子
   春暁や飛ばしよみする青春記      棚野 愛子
   うららかや鋏ひとつの雨細工        太田 蔵之助
   暮れ初めし橋くぐり行く都鳥        神田 尚計

   




 12月21日前沢「味たなか」にて忘年会を兼ねて15年度(通算52回)を開催。参加者18名(投句3名)、高得点句(4点句以上)は下記。(兼題 忘年/当季雑詠)

   ガラス拭き冬至の空の青さかな    三田 三 (畔巣)
   大根や葉を結ばれて干されおり    川島 知子
   完走のレイ誇らしく年忘れ       安宅 武一
   大皿は古伊万里写し年忘れ      河村 洋子
   追悼に始まる忘年同期会        杉本 達夫



 11月16日(日)開催 兼題 「隙間風」「当季雑詠」 席題 「帰り花」 (3点句以上)
   
   薄墨の筆のかすれや秋深む        神田 尚計
   帰り花旅終え旅を恋ひにけり        太田蔵之助(千雪)
   子の去りし家の広さや隙間風        川島 知子
   夜深く猫の連れ来しすきま風        安宅 武一
   大かげを描きて西へ寒がらす        高塩 和巳
   忙しげな職人の手や日短し         坂本信太郎
   ひとり居や足裏(あうら)をなでる隙間風  神田 尚計
   尼一人住まふ庵の帰り花           三田 三(畔巣)
   禅寺は大樹に埋もれ冬構え         松田 博雄




  9月21日(日)、中央公民館において第50回句会を開催、節目の50回目であったが、病気療養中の部員も多く、記念行事は後日の企画に委ねた。出席者は15名(投句のみ3名)。兼題「新米」 「当季雑詠」。席題「曼珠沙華」(彼岸花)
 高得点(4点以上)句は下記4句。

    秋蝶の訪れもある書庫の昼    杉本 達夫
    駅を出ていつか一人の良夜かな 三田 三(畔巣)
    新米を研ぐエプロンの弾みおり  比護 喜一郎
    新米の粥のうれしき二日酔い   杉本 達夫



  7月21日(海の記念日)西部地域センターにおいて第49回句会を開催。 出席者は今回より参加された特別会員(東大卒)を含めて17名(投句のみ1名)。
      兼題 「海の記念日」。 「当季雑詠」。  席題 「百合」

 高得点(5点以上)句は下記4句
   夏帽を膝にきちんと元教師     太田蔵之助(千雪)
   鬼百合のただ二輪の香でありし     〃
   柴犬の耳は起きてる昼ねかな     本間 信二
   絵手紙は
遠き友より百合の花       川島 知子



  5月18日(日)市中央公民館において第48回句会を開催。 出席者13名(投句のみ4名)。
      兼題
 「葉桜」 「当季雑詠」  席題 「祭」
 高得点句(3点以上)
   菖蒲湯に古希の男の童唄      三田 三(畔巣)
   柏餅二つのりたる置き手紙     太田蔵之助(千雪)
   葉桜や教室もれる九九の声     太田蔵之助(千雪)
   つんつるのゆかたきこんで祭りの子 川島 知子
   夏帽子少し早めにかぶりけり    馬場 清彦
   路地裏の祭提灯走り雨       神田 尚計
   葉桜や二つ駆けゆくランドセル 
  三田 三(畔巣)
   湧水に今日生まれたる糸トンボ   松田 博雄
   祭礼の提灯だけで義理果たし    本間 信一



 奥多摩吉野梅郷吟行 4月20日、9時45分、花小金井駅に集合し一路青梅に向かった。生憎の雨であったが、新会員の川島さんを含む14名が参加された。11時日向和田に到着、まず多摩川神代橋を渡り、腹ごしらえとばかり石挽きそば「松葉屋」へ。大半の人がとろろ冷やしそばを注文したが、味の方が定かではない。吉野街道にでるとその街道沿いが吉野梅郷である。2月下旬から3月下旬にかけて梅見の人々ですごく賑わうところである。一部会員は梅の公園に行き、又吉川英治記念館へ行く会員もあった。吉川英治は昭和19年から28年までの約10年間この吉野に住んだ。英治は小説のほか早くから川柳に親しみ、俳句も少なからず残している。即席即興のものが多いが、代表的な句として、「雨しとど どの窓からも萩すすき」 「秋蘭けてのこる浅間と画家一人」がある。
 三椏や白すみれ、二輪草など珍しい草花を観賞しながら、畠山重忠ゆかりの即清寺を参詣する。三々五々本日宿泊する国民年金健康保養センターへ。16時より全員集合し句会が始まる。 翌21日は朝食後、現地解散となった。
                                      (部会顧問 太田蔵之助記)
 高得点句(4点以上)
        花過ぎし吉野梅郷昼閑(ひるしずか)    神田 尚計
        遅桜煙霞の中の一樹かな             〃      
        乗り継ぎてきし青梅路や遅桜      橘 正治(雅契)
        青き瀞ねらう釣果や花うぐい      安宅 武一

 


 3月23日 第46回句会 高得点句(5点以上)
              兼題:「東風」「春雑詠」 席題:「鶯」

        鶯の声に手を置く厨事          太田蔵之助(千雪)
        やわらかに和紙の目かくし納め雛       〃      
        花馬酔木たわわに妖し仏みち      大久保 泰司
        東風吹く日戦火の迫る音を聞く     杉本 達夫






 
2月16日第45回句会 高得点(4点句以上)句
              兼題: 「ものの芽」「冬雑詠」    席題:「春雨」

        昨夜(ゆべ)の雨ものの芽動く気配あり 坂本信太郎
        バーボンの氷ことりと春近し      三田 三 (畔巣)
        手作りの味噌が自慢ぞ木の芽和え    安宅 武一
        鐘楼の屋根に輪廻の草芽吹く      杉本 達夫
        面映ゆし譲らる席の冬日かな      高塩 和己
        春の雨江戸紫の蛇の目傘        大川 洋子(浩仙)



忘年会を市内すし屋で開催

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  雪月花−俳句は誰でも詠めて易しいが奥は深いものと稲門俳句部会に入門して七年、やっとわかってきたところだ。未熟者ゆえに今迄、著名な俳人に接したことも直接話しをきいたこともない。俳句に関する話は唯一度だけ七年前、大隈小講堂で暉峻康隆先生の洒脱な名講義を受けたことがある。主題は「西鶴と芭蕉」だったが俳句の心得も痛烈だった。その名言をノートを紐解き自戒としたい。曰く・・・
「現代の俳句は堕落している。歳時記俳句なり、そして選に入ろうと思う余り選者にこびる句がはびこっている。もっと自然や人生に向かいあってつくるべし。俳句も短歌と同じく詩だから、人生に対する感動、自然美から与えられる感動、それを等距離で詠むべきだ。そした俳句が俳句であるためには季語や季節感を媒体として自然だけじゃなくて人生や社会に対する悲しみや怒りも表現すべきだ」
 早稲田の名物先生も一昨年桜満開の時九十三歳で逝ってしまった。ノートに記された時世の句。
          「さようなら雪月花よ晩酌よ」   桐雨        大久保泰司 記

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  11月17日第43回句会 高得点(5点句)− 兼題「冬(めく)」 席題「蜜柑」
             一湾をつつみ蜜柑の山の照る     橘 正治
             普請場の隅の茶うけの青蜜柑     杉本 達夫
             宅配の蜜柑に残る故郷の香      比護 喜一郎
             冬めくや東寺の塔の影長し       大久保 泰司
             灯るるや老手相見のこぼす咳     神田 尚計

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龍王峡吟行記

 9月16日朝6時、俳句仲間総勢15人(うち女流3人)を乗せてマイクロバスは東久留米駅西口を出発。東北道に入ったところで突然校歌のテープが流れ出し、これに和して朗唱するわれらが長老太田千雪さんの若々しい声で今度の吟行の旅は始まった。雨催いの空からはやがて小雨が落ちてきたが、昼食の後目的龍王峡に着く頃には雨もひとまずあがり、暑からず寒からずの吟行日和となった。
 龍王峡は、鬼怒川・川治両温泉の中間にある、自然が何千万年もかけてつくりあげた怪岩、奇岩から成る渓谷美。そのうちの白龍渓と呼ばれる、虹見橋からむささび橋をめぐる約3Kmのコースを、俄吟遊詩人は句帳を携えて散っていった。
 森林の緑を浴び、雨に濡れた岨道や木道に足をとられながらも、轟音響かす虹見の滝や堅琴の滝、そしてかめ穴や兎はね、水芭蕉の群生を見ながらの楽しく和やかな吟行のひとときであった。
 当日はホテルに着いて投句のみ。夜の宴会はもちろんカラオケで盛り上がる。翌17日も雨。途中ベコニア園「花いちもんめ」に立ち寄り、しばしメルヘンの世界に浸り、帰途につく。そして本番の句会はなんと走るバスの中という珍しいものとなった。早速披講に入り数々の名句が読み上げられる。そのあと橋雅契、太田千雪両先輩の選評も厳しかったが、談論風発してまことに和やかな句会となった。
 時を忘れて午後3時西口に無事到着した。          桜庭 明 記

          岩を抱く走り根濡らし霧の雨     三田 三(畔巣)
          鬼怒の峡音を辿りて秋の滝     神田 尚
          鮎焼いて栃木なまりの客を呼ぶ   太田 蔵之助(千雪)
          岩を噛む虹見の滝や秋時雨     安宅 武一



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    俳句部会に入って
 
       
 旅の好きな人間にとって俳句と短歌は良き伴りょであり時には一句なさんとしん吟することもあるが何しろ一人よがりの自己満足に過ぎない。たまたま去年完全リタイアしたのを機に正式に俳句をと思っていたところ稲門会に部会ありと知り早速四月の総会で入会し俳句部会に入った次第です。まだ句会は三回であるが全員が批評家であり遠慮のない発言はさすが早稲田の句会と変に納得した。俳句は我が家にも波及し新たな刺激となっている。句会を前にしての兼題では素人批評家であり選者である老妻も席題ではそうもゆかぬが過去の共有者としてあの日あの時を想起させてくれる存在は貴重である。事実二回目も句会の席題ひまわりではとっさにあの暑い夏の日、二人で眺めたひまわりでを思い浮かべた。その日市民農園ではようやく陽が西に傾き農具の手入れを終えた人達は三三五五帰り仕度を始めていた。そんな時、畑の隅に一本の大きなひまわりが西日を浴びて輝いていたのが印象的であった。その場景を早速一句に託し出来上がったのが

           ひまわりや 暮れゆく畠に 子らの声

である。図らずも二点句に選ばれ栄光の至りでありこれを励みとしていきたい。ともあれごく日常的な生活の中で俳句が新たなテーマとして加わった意味合いは大きく今後とも生活に潤いと賑わいを与えてくるれることであろう。
   高塩 和巳記  9月6日

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◆8月25日第41回句会 高得点句(五点句以上)  季題 : 新涼、 新蕎麦、 蜩

           新涼や寝返りし児の白き蹠(あし)      神田尚計
           新蕎麦を備前に盛りて箸を割る        神田尚計
           蜩や夕餉の仕度葱きざむ           安宅武一 

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 俳句を詠む上で必要なキマリさえ知らずに同好の仲間と一緒に始まった当部会も、メデタク七年目に入った。当部会は地位、権力、肩書き、名声、財力、老若、性別等情実の一切介在しない感性と趣味の世界で遊べる時間を同好の士が共有して過ごせる楽しくて仕方のない会である。年8回の句会を楽しんでいるが、一泊二日の吟行の時などは、待ちどおしく、まるで遠足の日を待つ小学生みたいである。
         "名句をと おそれげもなく 絞る汗”
 春夏秋冬の移り変わりに目を留めるようになり、それまで気忙しさにかまけて見過ごしてきたことが悔やまれてならず、今からでも取り戻したいと念願している。
    馬場 清彦記  7月30日

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◆7月21日(日)第40回句会 高得点句(三点句以上)  季題 : 天道虫、雲の峰、向日葵

          てんとう虫しゃがむ幼児(おさな)の掌から発つ   神田尚計
          銀髪の神父の襟に天道虫               太田蔵之助(千雪)
          向日葵や廃校近き運動場               桜庭 明
          浄土より妻帰り来よ雲の峰                 〃
          向日葵が見張る路傍の無人店            三田 三(畔巣)
          駅長の指呼の彼方に雲の峰                〃
          汐だまり蟹よぎりゆく雲の峰              馬場清彦
          雲の峰備前瓦の蔵屋敷                 松田博雄

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◆5月26日(日)第39回句会高得点句(三点句以上)  季題 : 噴水、草いきれ、薄暑

          噴水をもうひと回り車椅子         比護喜一郎
          負け試合少年去りて草いきれ          〃
          上着持つ右手けだるき薄暑かな     三田  三(畔巣)
          木陰にて小犬腹這う薄暑かな       大久保泰司
          海岸線豊かにのびて村薄暑        大田蔵之助(千雪)
          舞うように噴水低くまた高く        坂本信太郎

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「稲荷山吟行」
 俳句部会は花曇の3月31日、狭山市の稲荷山公園(ハイドパーク)で春の吟行を実施しました。当日の参加者は13名。今年の桜の開花は異常に早く、稲荷山も既に葉桜では?と懸念されましたが3月下旬の引き締まった気候が染井吉野の花を長持ちさせ、遅咲きの里桜、山桜、八重桜なども咲き揃っての百花繚乱となっていました。
 ゆったりと起伏しながら随所に憩いの広場を造っている芝生はよく手入れが行き届き、枝を広げた老松の緑を背景にして研を競い合う万朶の桜、折りよく当日挙行されていた「稲荷山公園桜祭り」を囃す和太鼓の音に誘われるかのように舞い散る花吹雪・・・・・・
 三々五々芝生に弁当を広げての談笑は吟行の醍醐味ながら、肝心の俳句の方は眼前の光景に目移りするばかりで焦点が絞りきれません。素材となる対象が豊富すぎても句作は苦労するものと勉強させられた稲荷山ではありました。午後は公園に隣接する狭山市ユースプラザに席を移し、各自三句の自信作を持ち寄っての句会を開催。爛漫の春を満喫した当日の高点句は以下の通りとなりました。
  三田 記

       幹に掌をあてて散る花惜しみけり         太田蔵之助 (千雪)
       しきりなる落花の中に人を待つ              〃
       あと幾たび今日爛漫の花の下           三田 三   (畔巣)
       さんざめく人の頭上や花万朶            坂本信太郎 

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 平成14年度第一回(通算37回)の句会が、2月24日中央公民館で開催された。出席者は17名、都合で出席出来なかった2名の投句もあって、7年目を迎えて各位の意気込みが感じられた。兼題は「雪解」と「沈丁花」、当日出題の席題は「野火」。沈丁花は咲き出したところだったが、「雪解」「沈丁花」と同様、早春の詩情が巧みに詠まれ、それぞれの持ち味が出ていた。
今回の高点句(5点句以上)

         雪解けや宿の親父の大欠伸        安宅 武一
         悠然と鹿遊ぶなか山を焼く         河村 洋子
         沈丁花話もはずむ垣根越し         大久保 泰司

 句会が終わって、一回ロビー喫茶で帰りを急がない部員七、八人が歓談。今日は「できがよくなかった」、「最近うまくまとまらない」などなど呟きも聞こえた。
   橘 正治記
             




 昨年は、春・稲荷山公園桜祭り吟行、秋・鬼怒川温泉一泊の龍王峡吟行で、年八回の句会のなか写生句に心情句に成果があがったと思う。これは属目-目をつけてよく見ることの効用であると思う。句力向上にも日帰り吟行を今年はふやしたいと計画している。 
 部会長  橘 正治  昭29年文